ぼくのJ2ライフ

気づけばJ1よりもJ2の観戦歴の方が長くなってしまったジェフサポのブログ。 コンセプトは「常に前向きに、ユーモアを忘れずに」

町田也真人

熊本戦で気づいた、フクアリを素晴らしい空間にする方法

2016年4月14日以降、過去に例を見ない頻度・回数で繰り返された熊本地震。まずは、亡くなられた方々のご冥福をお祈りすると共に、被災された方々の1日でも早い回復・復興をお祈りします。

その地震によってリーグ戦を含めて活動を一時休止していたロアッソ熊本ですが、無事に活動を再開し、5月15日のフクアリでのジェフ戦で約1ヶ月ぶりのリーグ戦への復帰を果たしました。僕もその試合に立ち会う幸運に恵まれましたので、遅ればせながら感想を書き残しておこうと思います。

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ジェフの勝利を願っているのは、生粋のジェフサポだけという状況!

ジェフサポのブログであるにもかかわらず、思わずロアッソを主語にして書き始めてしまいました。でもそれもそのはず、この試合の主役は、どう考えてもロアッソ熊本とそのサポーターたちでした。ジェフは脇役で、勝っても負けても引き分けても主役にはなれません。むしろ、華麗な引き立て役として、「タレント豊富な千葉が、実力では上回っているにもかかわらず、県民の想いを胸に必死に戦う熊本に屈する」という筋書きを期待していた人が多いのではないかと思います。実際、ジェフはこういう必死な相手に弱い印象がありますから、他サポさんからも「ジェフはいつも通りの戦い方をすれば良いよ」などと期待の声が寄せられます。

しかし、今年のジェフは違いました。まず、そこまでタレント豊富ではありませんし、大して実力もありません。熊本が4月9日以来のリーグ戦なら、ジェフは4月9日以来勝利がありません。この間、5試合を戦い、積み上げた勝ち点はわずかに3。試合開始前の1試合あたりの平均勝ち点が、ロアッソの1.86(7試合で勝ち点13)に対して、ジェフは1.33(12試合で勝ち点16)ですから、実質の順位はロアッソよりも下。これには、フクアリに集結したマスコミの皆さんも「え?ジェフって12位なの?強豪に立ち向かうロアッソという構図にしたかったのに、調子が狂うなあ」と思ったに違いありません。


勝負の厳しさを見せつけたのは、なんと町田也真人!

実際に試合を通して見れば、ロアッソはスタミナや試合勘がまだ戻っておらず、最近勝てていなかったとはいえ少しずつ調子が上がってきていたジェフとは、かなりの差がありました。でも、それはジェフの選手たちが突け入る隙を一切見せずに、プロフェッショナルに徹したからでもあります。ジェフサポーターですら「ロアッソにも頑張って欲しいな」と思ってしまうような一戦。しかし、2011年の仙台と川崎の試合の例を持ち出すまでもなく、もし1点でも熊本に入っていれば、一気にスタジアムの雰囲気が変わって、試合の結果が変わっていた可能性は大いにあると思います。

その意味で、やはり大きかったのは、試合開始直後のGK佐藤優也の片手でのビッグセーブと、町田也真人の2得点。特に、ジェフにとっては戦いにくさのあったこの一戦で、大きな先制点を叩き込み、そして相手に厳しい現実を突きつけるような冷酷な2点目を決めたのが町田というのは、失礼ですが意外でした。点が取れないことが課題と言い続けられてきた町田が、全国から注目を集めた試合で2ゴール。これで周りの見る目も変わってくるでしょうし、これがきっかけで、プレーオフなどの大一番でも決定的な仕事をしてくれることを期待したいです。

この日のスタジアムの雰囲気の素晴らしさは、どこから来たのか

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最後に、色々なメディアでも取り上げていただいていますが、この日のフクアリの雰囲気は素晴らしかったです。地震後初の試合を戦う熊本を、Jリーグを代表してホストとして迎えるという特殊なシチュエーションが影響したことは間違いないですが、これを1試合限りで終わらせてしまうのはもったいない。

改めて振り返ってみると、この日のスタジアムの雰囲気の素晴らしさの要因は、試合に関わった人全員のお互いへのリスペクトであったと思います。

ジェフサポーターからロアッソサポーターへのリスペクト。
ロアッソサポーターからジェフサポーターへのリスペクト。

ジェフの選手からロアッソの選手へのリスペクト。
ロアッソの選手からジェフの選手へのリスペクト。

ジェフサポーターからロアッソの選手(特に巻!)へのリスペクト。
ロアッソの選手(特に巻!)からジェフサポーターへのリスペクト。

ジェフの選手からロアッソサポーターへのリスペクト。
ロアッソサポーターからジェフの選手へのリスペクト。

そして、この試合を裁いてくれる審判団へのリスペクト。

一つでも欠けていれば、この素晴らしい雰囲気にはならなかったと思います。

観客数も14,163人と今シーズン最多でした。これだけの人数が集まって、お互いにリスペクトを忘れなければ、フクアリをこれだけ素敵な空間にできる。このことに改めて気づけたことが、ジェフにとってはこの日最大の収穫だったのではないかと思います。もちろん、シーズンを戦う中で色々な感情は出てきて当然ですが、関係者へのリスペクトはいつでも忘れないようにしたいと思います。

ロアッソ熊本に関わる皆様、ありがとうございました。今後の躍進をお祈りしています。(でも、ジェフも負けませんよ!)

天皇杯1回戦・東京国際大学戦 観戦レポ:非ロマンティックな勝利

土曜日の天皇杯1回戦は現地観戦することができました。これまで試合観戦レポートはあまり書いてこなかったのですが、観客が3,156人と少なかったこと(しかも、そのうち300人以上はたぶん東京国際大学のサッカー部員)、テレビ中継がなかったこと、たまたま時間があったことなどから、試合を見られなかった方にもどんな試合だったのか分かるよう、レポートを書いてみようと思います。と、ここまで書いた時点でYouTubeに試合全体の映像がアップされているのを発見してしまったのですが、細かいことは気にせずに行ってみましょう!

まず、本日のジェフのスタメンは以下のとおり。
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試合前は、これまであまり公式戦に出場したことがない若手が見られるかな、乾とか浦田とか見てみたいな、と少しワクワクしていたのですが、関塚監督が選んだのは、これまでのリーグ戦でもそれなりに出場機会を与えられてきたメンバーたち。ミッドウィークの試合でもないし、怪我を抱えている選手や疲労の溜まっている選手以外は、いつも通りのメンバーで戦うということなのでしょう。とは言え、高木、金井、太亮、勇人、谷澤、井出、オナイウといった主力メンバーは休養を与えられ、スロベニア代表に選出されたネイツも不在だったため、メンバーは1.5軍といった感じ。フォーメーションも、このメンバーなら3バックで戦うことも可能だったと思いますが、あくまでリーグ戦と同じ4−4−2を選択しました。

対する東京国際大学のフォーメーションも、サイドハーフが自陣深くまで戻っていたので6バックや5バックに見える場面もありましたが、基本的には4−4−2だったと思います。

前半:停滞感を打ち消した安のゴール

で、前半ですが、正直あまり良くなかったと思います。ジェフはボールは落ち着いて回せるのですが、ほとんどが相手のブロックの外。サイドハーフから逆サイドのサイドハーフまで、ボランチやCBを経由してU字型でボールが回ると言えば、ほとんどのジェフサポーターの方がイメージできるでしょうか。

特に厳しいなと思ったのが、左サイド。上記のとおり、サイドハーフが町田で、サイドバックが北爪の専修大コンビだったのですが、町田は谷澤や井出ほどタメが作れるわけではなく、北爪も左足で精度の高いクロスが上げられるわけではないので、2人ともショートパスで崩そうと頑張ってはいるものの、あまり効果的な崩しはできていませんでした。結局、あまりディフェンスを寄せられないまま、逆サイドまでボールを回し、水野がクロスという形が多く見られました。水野のクロスは相変わらず一級品で、それに詰めるのが安と森本という大学生には手の余る2人なので、それなりにチャンスっぽくはなるのですが、チームとして作りたい形はあまりできていないように見えました。

そんな閉塞感が打ち破られたのは、前半38分。町田が田代とのワンツーで上手く中央に入り込むと、ゴール正面あたりにいた水野にパス。水野はシュートフェイントでDFを1人かわし、左足でミドルシュート。これは相手のCBがブロックしますが、ボールは安の足元へ。安はためらわずにダイレクトで右足を一閃。この人はやっぱりパワーがありますね。目の覚めるようなスピードのシュートが左ポストに当たってゴールに吸い込まれていきました。

得点シーンの描写はこの動画を見て書いただけなので、こちらを見ていただくのが一番早いです!


このシーンまでジェフはシュートすらほとんど撃てておらず、枠内シュートも初めてだったのではないかと思うのですが、このチャンスをものにできたのが大きかった。ここからは急にジェフの選手の動きが良くなり、ボールもダイレクトで良く回るようになります。しかし、東京国際大学も粘り強く守って2点目は許さず、そのままハーフタイムへ。

後半:明暗の分かれたフォワード陣

後半の立ち上がりは、再び東京国際大学が前からボールを奪いに来ます。再びというのは、前半の立ち上がりも前からプレスに来ていたからなのですが、前半とは異なり、ジェフには1点の余裕があるので、そんなに危ないシーンは作られません(前半はちょっと危ない取られ方がいくつかありました。)。

逆に、空いたスペースをうまく突けるようになり、後半早々にはカウンターから抜け出した安がペナルティーエリア内で相手の選手に足をかけられ転倒して、PKを獲得。すると、ここまであまり見せ場のなかった森本が、相手GKからボールを受け取ろうとする安の前に割り込み、まんまとボールを受け取ります。で、PKを蹴りますが、シュートはGKの逆はついたものの、まさかの枠外。さすがにこのままではサポーターにトンカチで殴られると思ったのか、その直後に左サイドからの安のクロスに足で合わせますが、シュートは再び枠外。その後もゴール前の混戦からフリーでシュートを放つシーンがありましたが、ボールは撃った瞬間に枠外と分かる弾道でクロスバーの遥か上へ。その直後に松田と交代させられてしまいます。

で、松田が入ってからのジェフですが、皮肉なことに攻撃がめちゃくちゃスムーズになりました。相手が1点取らないといけない状況でスペースがあったということもあるとは思いますが、安と松田の役割分担がはっきりし、ツートップがかなり機能し始めます。後半19分には、安との上手いワンツーで前を向いた松田が、DFラインの裏に抜け出した町田にスルーパス。町田がGKとの1対1を落ち着いて決め、天皇杯通算2点目、公式戦通算3点目のゴール。

圧巻は後半34分。岡本からのロングボールを安→松田→水野とつなぐと、水野が右サイドを縦に突破し、相手DFに当たらないようにマイナスのクロス。これに安がジャンピングボレーで合わせ、ワールドクラスのシュートでこの日2点目を決めました。その後も、惜しいチャンスはあったものの、追加点は奪えずに試合終了。大学生を相手に危なげない勝利を収めました。

まとめ:現実的な戦い方で、非ロマンティックに勝利

大分長くなってきましたが、感想です。まずは、勝てて良かった。相手が大学生だったので「勝って当然」と考える人もたくさんいると思いますが、天皇杯は、宣伝の仕方を見れば分かるとおり、ジャイアントキリングのための大会。基本的に「キリングされる側」の方が戦いにくく、他の試合を見てもJ2のクラブがカテゴリーが下のチームに負けたり、勝ってもギリギリの勝負をしたりしていますので、「ジャイアントキリングされそうなクラブ」ランキングがあれば上位にランクインするであろうジェフが、危なげなく勝てたことは純粋に喜ぶべきだと思います。

ただ一方で、大学生を相手に圧倒したかというと、そうでもなくて、出場した選手の出来も含めて、あくまで普段のリーグ戦の延長線上というか、やっぱり普段できていないことが、相手が大学生だからといって突然できるようになるわけではないよね、ということを再認識させられた試合でもありました。

でも、その中でも、安がその実力の片鱗を見せたことは大きいと思います。松田が加入してちょっと影が薄くなっていましたが、元々期待されてシーズン途中に加入した選手ですから、残りのシーズンに向けてバンバン調子を上げていって欲しいと思います。ちょうど調子が上がってきた時期に北朝鮮に拉致、じゃなくて招集されてしまうことは残念ですが、ぜひ怪我などせずに無事に帰ってきて欲しいですね。

水野と町田も良いアピールになったと思います(町田は、後半、得点シーン以外にも、右サイドからのクロスにダイアゴナルに走りこんで、惜しいヘディングシュートを放つ場面がありました。)。ただ、この2人については、プレースタイル上、現在のトップチームのフォーメーションではレギュラーを掴むことが難しいと思うので、関塚監督にとっても悩ましいところでしょう。でも、やっぱりクオリティーの高い選手であることは、この試合で改めて証明できたと思いますので、スーパーサブ的な起用も含めて、今後の試合には絡んでくるのではないでしょうか。

心配なのは、いうまでもなく森本です。松田と交代させられたのは、最初から決まっていたのか、勝負に徹する関塚監督のリアリズムだったのか、それとも、これ以上調子の悪い状態で試合に出しても余計に自信を失うだけという親心だったのかは分かりませんが、3連続で決定機を外した直後の交代で、しかもその後に他のFW陣が活躍したとあって、結果的に森本にとっては最悪のタイミングでの交代となってしまいました。試合後には他のチームメイトたちから慰められており、本人もかなりショックを受けていたのかもしれません。ただ、ドン底まで落ちたら後は這い上がるしかないし、FWはシーズン中無得点でもプレーオフ決勝で昇格を決めるゴールを決めればヒーローになれるポジションでもあるし、そんなことは海外で長くプレーしてきた本人が一番良く分かっていると思うので、とにかく頑張って欲しいと思います。

がんばれ森本。
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